古いアルバムですが好きです

矢野顕子は日本のポピュラー音楽界が誇る偉大な才能である。このあり余る音楽的才能をもってすれば、あと少しの俗っぽさとマーケティング能力があれば、もっともっとお金が儲かったことだろう。でもそういうユーミンみたいなところがないのが顕子お姉様の魅力なんだが。
NYに住む彼女は毎年1回このJoe's Pubという店で弾き語りライブをやるという。予約して行ったが、席数よりもずっと多くの客を入れるので、遅く入った我々は立ち見する破目になった。しかも回りはほとんど日本人。Sの機嫌がみるみる悪くなって、よっぽどもう帰ろうと言おうかと思った。
しかし顕子さんが出てきてピアノを奏で始めると、そんな不満はすぐに吹き飛んで、夢中で聴いた。何と力強く美しいピアノ!何と奔放で創造力に富んだ歌唱!何と完璧でしかもヒューマンなリズム感!
ご近所づきあいをしている友人だと紹介されてマンハッタン・トランスファーの背の小さいほうの女性が出てきて、デュエットが始まった。まあ豪勢なこと。
CDで気に入っていてもライブを見ると失望するアーティストが多いが、矢野顕子はまったく逆だ。改めて言う。顕子さんは偉大だ。
一言だけ不満を。地下鉄の音がひっきりなしに聞こえるのが気になった。