チケットとディナーの招待券

ラジオシティホールで行われるトニー賞授賞式のチケットが偶然手に入った。それも先頭から10列目くらいの絶好のポジション。こんな幸運は二度とないに違いない。Sはイブイングドレス、僕はタキシード。「郷に入れば郷に従え」だ。
席に着くとすぐ傍にミュージカル部門の最有力候補「ヘアスプレイ」のチームがいる。首を伸ばせば、「ナイン」のアントニオ・バンデラスや「ムーヴィン・アウト」のビリー・ジョエルも見える。TVで生中継するので観客にいろいろ注意がある。トイレはコマーシャルの間に行くこと、終わるまでに戻ってこなければダミーの観客が席を埋めるので次まで外で待つこと。
舞台の両サイドに2つの大きなスクリーンが置かれている。その画面にタイムズスクエアが映り、特設舞台、ピアノとだんだんズームされて、ピアノの前に座っているのがビリー・ジョエルであることがわかる。あれ、さっきまでここにいたのに。すぐに彼が「New York State of Mind」を歌い始め、ワンコーラス歌ったところで立ち上がり「紹介します。彼らは…」と言ったところで、舞台に「ムーヴィン・アウト」のダンサーたちが飛び出してきた。
授賞式は、ミュージカル部門にノミネートされた数々のショーの名場面が代わる代わる舞台で演じられ、その合間に演劇部門、ミュージカル部門の各賞受賞者が順番に発表されていく、という構成だった。Sも僕もこれまでに見たミュージカル作品は10くらいのもので、それほど熱心なミュージカルのファンというわけではないのだが、目の前で繰り広げられるショーの「名場面」の数々には圧倒され、感動した。現在世界中で最も充実したショーを全部まとめて見ているという事実に興奮していたこともあるだろうけど。
大方の下馬評どおり「ヘアスプレイ」がミュージカル部門の主要な賞を総嘗めにした。発表の都度、僕らのすぐ近くのヘアスプレイチームにスポットライトが浴びせられ、抱き合って喜び、立ち上がって誇らしげに舞台に上がっていくことが繰り返された。TV中継にコマーシャルが入って休憩になる毎に、大勢のショービジネス関係者たち(らしき人々)が彼らを祝福しに集まっていた。
ところで、ERの婦長キャロル役の女優、ジュリアナ・マルグリースがプレゼンターとして登場したのは嬉しかった。第1シーンズの自殺未遂でERに運び込まれる衝撃のシーンから、単身シアトルに移ったダグ(ジョージ・クルーニー)を追ってカウンティ病院を後にした第6シーズンまで、キャロルはずっとERのヒロインであり続けた。ラジオシティホールの舞台に現れたキャロルは、僕にはとてつもなく美しく見えた。