「中華料理を食べるならアメリカよりカナダだ。なぜなら香港のお金持ちたちが返還を嫌ってカナダに移住した時、シェフが大勢ついて行ったから」という話は何人もの人から聞いた。東京時代に4度も香港に食い倒れの旅をしたぼくとしてはいつかカナダに行きたいものだと思っていたら、今回トロント出張のチャンスが巡ってきた。
トロントの人が昼は麺粥店、夜は本格広東料理レストランに連れて行ってくれた。店名を失念してしまったのだが、ミッドタウンの店のように清潔でチャイナタウンの店のように中国人で満員盛況、香港や東京(の志の高い店)で味わえるような、味を足し過ぎておらず火の通りもちょうどよい上出来の料理を楽しむことができた。中華料理というジャンルは容易に現地の味覚と交じり合って世界中に広がったと言う(NYでもアメリカンチャイニーズという感想を拭い去ることができない)が、ここトロントにはまだ香港の味がそのまま残っているようだ。